松と米杉の違い
ギター表板の材料には、一般的に音響面や耐久性から比重や収縮率を含めて振動伝達性の良い松や米杉の針葉樹が使用されています。材料は音や外観からからアルプス山脈(ドイツ松など)や北海道の大雪山(エゾ松)、ロッキー山脈(エンゲルマンスプルースなど)の寒冷地の松(スプルース)が使用されます。また20世紀後半にはカナダ産の米杉(シダー)も使われ始め、松と異なった音色や音量、響きを持ち、ギタリストにも評価されています。
ギターに使用される松と杉の平均的な材料を比較すると、素材の色は松系が乳白色で米杉が茶褐色をしています。比重は松が0.35~0.45、米杉が0.3~0.4と米杉の方がやや軽く、松はヤニ分があり強制的に曲げた時にしなりがありますが、米杉は曲げた時にしなりが少なく限界で割れます。
松は、米杉と比較して一音の中の倍音成分が少なく芯のあるクリアーな音色で、重量感があり、爪のタッチに敏感に反応します。米杉は、松と比較して倍音成分を含んだ明るく暖かい音色がします。また弾いた時の音の立ち上がりが早くてレスポンスが良く、音量があります。
私見ですが、完成直後は音色や音階ごとの鳴りなど松より米杉の方が音の完成度が高く感じます。逆に松の音は、経時変化や演奏効果で音が次第に成長していく楽しみがあります。
松か米杉かは音の好みの問題なので強制するものではありません。杉の音量やレスポンスの音の特性からタッチの弱い方や合奏などで音量が必要、最初から完成度の高いギターをお望みの方は米杉のギターが適していると思います。製作者側からは概念だけでなく、自分の好みの音や使用目的、自分の身体の適性などを考慮して両方を弾き比べて自分の好みの音や弾き易さで選択していただければと思う次第です。
江崎ギターでは演奏者の好みで表板の材料を選択できるようにしており、標準仕様は松ですが特注で米杉を特注することができます。
左:ドイツ松 右:米杉
左:ドイツ松 右:米杉