塗装へのこだわり
まったく塗装をしないギターも試作した経験があります。音量は大きいのですが音が開放的で品がなく評価できる音ではありませんでした。塗装は音を引き締め音づくりの重要な役割とともに美観や防湿での耐久性にも大きく貢献しています。
留学時代に本来はアグアードが塗装をしていたのですが目と足の問題でリタイアしていましたので、マドリッドの工房でエルナンデスにセラックニスの塗り方を学びました。エルナンデス、アグアードと3人でよく食事に出かけ、アグアードからもテーブルを利用して塗装の仕方を学びました。
セラックニス塗料
No.80は求める音を出すためにスペインで購入したセラックニスの固形をアルコールで溶かした塗料を使用しています。表板、裏板、側板、ネック、ブリッジ、ボディー内面の各部を手製のタンポにセラックニスをほんの少し染み込ませ、塗装と乾燥を繰り返し、1ヶ月半掛けて500回以上手作業で塗りこんでいきます。100%セラックニスのみを使用し、根気のいる仕事ですが音にこだわり、少しずつ少しずつじっくりと育てていきます。
仕上がりを見て「本当にセラックニスですか」、「仕上がりがきれいですね」と声を掛けられますが、細かく見ると合成樹脂のように鏡面仕上げができず、手塗りでタンポのスジ痕が少し見えますが、膜厚を薄くすることができ音に良い影響を与えています。No.55は音の心臓部である表板にセラックニスのみの塗装を採用しています。
2020年より「セラックニスフィニッシュ」と称し、No.55Gの裏板と側板、No.35Gの表板、裏板、側板は下地にウレタン系の塗料を使用し、中塗りと上塗りにセラックニス塗装を約250回塗り重ねています。以前のウレタンやラッカーより塗膜厚を60%薄くすることができ、音が進化しました。タンポ塗り、ペーパー研削、乾燥と根気のいる作業ですが音に重要な工程でこだわって作業をしています。
セラックニスのタンポ塗装