top of page

耐久性へのこだわり

師エルナンデスから学んだ「50年先のギターの状態を想像してつくれ」は既に私の言葉になっています。ギターは釘ビスを使わず接着のみで組み立てていきます。「割れ」、「剥がれ」、「変形」など50年先も問題ない状態を保てるよう製作段階で神経を使い、可能な限り対策を施しています。

致命的な欠点は「割れ」です。割れ対策で最も重要なことは、木工作業で組み立ていく時の材料の乾燥状態(含水率)です。乾燥した状態で組み立てられたギターは、湿度が高い時は材料が膨張して膨らみますが割れません。逆に含水率が高い状態で組み立てられると乾燥期に材料が収縮して周囲が固定されているために強度の弱い部分で割れます。

江崎ギターは乾燥した材料と製作環境を重要視しています。材料は長年の天然乾燥(屋根裏)と乾燥状態を一定にするために人工乾燥を行ったものを工房内にストックして製作環境に馴染んだものを使用しています。江崎ギター工房は窓を二重窓にしています。組立時期には除湿機とエアコンで工房内の湿度を昼夜30%~40%にコントロールした環境で組み立てています。これまで江崎ギターが経時変化で割れたとの情報はありません。

「剥がれ」に対しても響棒などの剥がれやすい部分には接着剤を使い剥がれ防止を行っています。またギターの裏板のセンターやボディーの周囲にバインディングとして装飾を入れるのもデザインですが、入れたバインディングに多数の接着部分が発生します。接着部分を可能な限り減らし長年の耐久性を確保するために江崎ギターはシンプルなデザインにしています。

一番大きな「変形」はネック反りです。弦の張力や温湿度の変化により変形します。変形することにより演奏性や音に影響を与えます。乾燥状態の良い材料を使用しても、指板とネックの膨張率の異なった材料を接着するため湿度の影響で変化することは避けられません。
しかし最小限に抑えるための製作方法を行っています。一本一本指板とネックの材料の強度が異なるので弦の張力を想定して手で力を加え、動きの変化状況を観測しそれに合わせて指板の上面の仕上げを行っています。フレットとそれを埋め込む溝の嵌合状態も重要です。緩くもなく固くもない状態の溝の寸法にして、フレットにくさびを入れて環濠状態を調整します。手の掛かる作業ですが、耐久性をキープするための工程です。

bottom of page