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材料へのこだわり

材料は木材業者から直接または間接的に購入しています。40年以上前に購入したものから最近購入したものまで工房内や屋根裏にストックしてあります。すべての材料を選別させていただくことを条件に、目と手、耳を駆使して選定しています。

 

表板はギターの表面で一番目につく所なので美観も大切にします。色や年輪の積み具合、節、節影、アテなど目に見える外観的な選別をします。手で材料に力を加えてたわみ具合による剛性の強さを調べ、材料を拳でたたいて音質や音程、響き具合を耳で確認して購入するかどうかを決定します。裏板と側板はセットで木目調、色調、割れなど外観面を優先させて選別します。

 

表板は音や外観から北半球の緯度や標高など限られた地域で伐採された松(スプルース)の厳選された材料がギター用として使用されていますが、日本のえぞ松もその中の一種です。スペイン留学時代にアグアードの工房でえぞ松を使用したギターを製作し、イエペスやギリアなど著名なギタリストに高い評価を得ました。私は日本人としてえぞ松の素晴らしさを訴えたくえぞ松を使用してきました。素晴らしいえぞ松は存在しますが、ギター用として製材されなくなったため購入できなくなり、たいへん残念です。えぞ松の在庫消化後にこれまでストックしていたヨーロッパのアルプス松を使います。

 

表板にカナダ産の米杉も使用しています。米杉は松に比べて比重が軽く木目が均一で素直です。松が芯のあるクリアーな音に対して明るく暖かい音色がしてレスポンスがよく音量があり、出来立てのギターでは杉の方が高い完成度です。ヨーロッパでは杉のギターが多く製作(生産)されていますが、日本のギター市場は圧倒的に松が多い状況です。松と杉の音は良い悪いではなく好みの問題なので日本人の好みとしてとらえていますが、杉の音を知らずに松といわれる方には杉の音を紹介しています。杉の音を見直される方も結構多いものです。

 

ワシントン条約で絶滅危惧種にハカランダがあり、商業用としての取引が禁止されています。ハカランダを使用したギターの商業用の輸出入では特殊な書類が必要です。私はハカランダの代用として外観的にも物性的にも近いマダガスカルローズを使用しています。ストックしているハカランダ材はEXTRAとして受注製作のみ行なっています。 

 

ヨーロッパでも裏板と側板にハカランダやインディアンローズを使用しています。それぞれに音に個性があり好みの範囲なので、アグアードもどちらを使用しても同じ価格を付けていました。日本のギター業界では音ではなく、インドローズという材料で価格の相場が決まってしまっていることが残念です。

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